瘋癲ノ喜多サン
理性と快楽の果てしなき闘い
第一部
理性というやつは、
まったく口うるさい。
快楽にふければ、
そんなことばかりしているとバチが当たるぞ、と脅しやがる。
ひと晩たっぷり楽しんだ翌朝には、
「まさか今日も快楽を求めるんじゃないだろうな」
なんて、耳元で囁いてくる。
そんなことばかりしていたら、
ろくな人生にならないぞ。
もっと真面目に生きろ。
先のことを考えろ。
少しは反省しろ。
朝から晩までブチブチ、ブチブチ。
四六時中うるさくて仕方がない。
だからある日、
理性を追い出してやった。
すると人生は、
少しばかり静かになった。
これからは、
おれの苦しみも悲しみも、
全部おもしろおかしく聞かせてやろうと思う。
なにしろ、
それを深刻に受け止める理性というやつを、
もう追い出しちまったからな。
第二部
男と女というものは、
どうも最初から噛み合わないようにできている。
一方は攻撃し、
もう一方は防御する。
一方は求め、
もう一方は拒む。
一方は大胆になり、
もう一方は臆病になる。
そして厄介なことに、
いつも同じ人間が攻撃するわけでも、
いつも同じ人間が拒むわけでもない。
愛しているときでさえ、
男と女は別々の場所に立っている。
男は理性的に女を愛し、
女は快楽的に男を嫌う。
男は理由を探す。
何が悪かったのか。
どこで間違えたのか。
何を直せばいいのか。
けれど女の心は、
そんな男の理屈とはまるで違うところで、
もう答えを出していることがある。
だから男がどれだけ考えたところで、
女が「別れましょう」と口にした、
その瞬間の気持ちなど、
わかろうハズもない。
男は別れの理由を考えている。
女はもう、
別れたあとの快楽を生き始めている。
キュレーター紹介
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