瘋癲ノ喜多サン

チテイジン宣言

経済活動に関わること
パブリックな領域
きれいごと
平均
協調
表層
マスメディア
家庭的
世間一般

私的な快楽
趣味
プライベートな領域
ありのまま
突出
排他
深層
ソーシャルメディア
破壊的
はぐれ狼

さて、
あなたはどちらを大切に生きていますか。

もちろん働くことは大切である。

金を稼がなければ飯も食えない。
家賃も払えない。
酒も飲めない。
女と遊ぶこともできない。

社会というものは、
みんながある程度まともな顔をして
ある程度同じ方向を向いて働くことで
どうにか成り立っている。

だから地上では
ちゃんとしていなければならない。

おはようございますと言い、
ありがとうございますと言い、
申し訳ございませんと言い、

本当はちっとも申し訳ないと思っていなくても
頭くらいは下げる。

協調性があり、
常識があり、
家庭を大切にし、
勤勉で、
健康で、
誰から見ても問題のない人間。

まことに結構なことであります。

だがね。

人間というものは、
そんなに簡単にはできていない。

地上で立派に生きれば生きるほど、
地下には何かが溜まっていく。

誰にも言えない欲。
妙な性癖。
くだらない妄想。
嫉妬。
執着。
孤独。
怒り。

そして、

こんなことをしてみたい。

こんな自分になってみたい。

一度くらい全部ぶっ壊してみたい。

そんなものが、
地下の暗いところで
じっと息をしている。

わたしはそれを「癖」と呼んでいる。

癖というものは厄介である。

道徳を教えても消えない。
会社に勤めても消えない。
結婚しても消えない。
子供ができても消えない。
立派な肩書きをもらっても消えない。

むしろ、

「わたしは普通の人間です」

という顔を長く続ければ続けるほど、
地下で妙に元気になる。

だからあまり常識的に、
あまり勤勉に、
あまり立派に生きるのも
考えものである。

何十年も蓋をしていると、

ある日突然、

とてつもない癖が
マンホールの蓋なんぞ吹き飛ばして
地上へ噴き出してくる。

そして本人が一番驚く。

「まさか自分がこんなことを」

などと言う。

いやいや。

ずっとお前の中にいたんだよ。

見ないふりをしていただけだ。

だったら時々、
地下へ降りてやればいい。

自分の中の
世間にはあまりお見せできないものと
酒でも飲んで話をすればいい。

お前は何が好きなんだ。

何が欲しいんだ。

本当は何をしてみたいんだ。

誰にも褒めてもらえなくても
やりたいことは何なんだ。

そういうものを
少しくらい飼っておいたほうがいい。

飼い慣らす必要もない。

殺してはいけない。

ただ、

そこにいることくらいは
知っておいたほうがいい。

ところが世間というものは
地上に出ている部分だけを見て
その人間の全部だと思いたがる。

会社員。
社長。
妻。
夫。
父親。
母親。
先生。
芸術家。

肩書きを貼りつけて安心する。

だが人間の面白いところなんぞ、
たいてい肩書きの下にある。

昼間立派なことを言っている人間が、
夜になればどうしようもない欲望を抱えている。

家庭的な人間にも秘密はある。

善人にも意地悪なところはある。

清潔そうな人間にも
人には言えない癖くらいある。

それでいいじゃないか。

そちらも含めて人間なのだから。

わたしはどうも昔から
地上より地下のほうに興味がある。

人が他人に見せている顔より、
隠している顔のほうが面白い。

平均より突出。

建前より本音。

正しさより癖。

大勢で同じ方向へ歩くより、
一人だけ違う路地へ曲がっていく奴のほうが
気になって仕方がない。

だから、

個人主義で、
少々破壊的に、
はぐれ狼として生きてみる。

すると不思議なもので、
全部失う覚悟なんぞしてみたところで
なかなか全部は失えない。

人生とは案外しぶとい。

もう十分生きた。

そろそろおいとましてもいいかな、

なんぞと思っていると、

腹が減る。

飯が旨い。

酒も旨い。

朝になれば見事に快便である。

身体というものは
本人の哲学などまったく無視して

「今日も生きます」

と勝手に宣言してくる。

神さまというものは、
まったく殺生なものなのであります。

死ぬ覚悟をした人間ほど
妙に元気にしておく。

まだ何かやれ、

ということなのだろうか。

ならば仕方がない。

これまで長らく関わってきた
地味な経済活動に終止符を打ち、

これより地下へ潜ることを
ここに宣言いたします。

もっと深く。

もっと怪しく。

もっとくだらなく。

もっと人間臭いところへ。

立派な人間を増やすつもりはありません。

そんなものは地上の皆さんに
お任せいたします。

わたしが増やしたいのは、

自分の癖を知っている人間。

人には理解されなくても
自分の快楽を持っている人間。

平均から少しくらいはみ出しても
笑っていられる人間。

自分の地下室へ
自分で降りていける人間。

すなわち、

チテイジンであります。

地下組織を確固たるものとし、

チテイジンの増殖と
地下社会の発展のため、

残された人生すべてを
惜しげもなく浪費することを誓います。

もっとも、

革命などというものは
大抵ろくなことにならないので、

武器はいりません。

旗もいりません。

制服もいりません。

必要なのは、

少々の勇気と、
自分の癖と、
人から笑われても平気な面の皮。

それくらいでいい。

地上では今日も
皆さんが一生懸命、

正常、
健全、
常識、
平均、

という看板を掲げている。

ご苦労さまであります。

その足元で、

こちらはこちらで
勝手にやらせていただく。

なにしろ地下には、

まだ名前すらついていない欲望が
山ほど眠っているのだから。

そしていつの日か、

地上にいる人間のほうが少なくなって、

「あれ、俺たちのほうが地下だったのか」

と気づく日が来るかもしれない。

その日を楽しみに、

今日もせっせと地下へ潜る。

地下が地上になる日も、
そんなに遠くない。

キュレーター紹介

逝かせ縄という妙技を操り、多くの女性を快楽の果てと誘う。東京と名古屋に道場を持ち、日本古来の文化である美しい緊縛を多くの生徒に伝承している。美しくなければ緊縛ではない美しい緊縛は気持ちがいい、それは肉体と精神と性が解放されることだ。
詳しいプロフィールはこちら:https://smluxury.jp/profile/

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